本タイトルもついに三部作の最終を借りました。ローマ帝国の衰退期を取り上げた回になります。塩野七生先生の「ローマ人の歴史」が大好きで、通しで10回以上は読んでいますが後半の衰退期を描く先生の文は湿りがちになります。
ハンニバル、スキピオ、カエサルといった共和政時代の英雄達を描いていた回の生き生きとした文に比べると、若干読む方の気分も湿りがちになりました。ワクワク感って言うんですかね。とはいえ衰退期にワクワクを求めてもねと言う所に行き着くんですが。
本タイトルはハドリアヌス時代の話を多く取り上げています。ハドリアヌスは所謂五賢帝の一人で衰退期ではなく全盛期の皇帝と言えると思います。その時代でも衰退の兆しは出ていたということです。ここでも発掘調査から色々なことが明らかになってきます。
イギリスにあるハドリアヌスの長城付近の要塞が発掘の対象になっています。そこから色々な物が出土しています。最果ての要塞に女子どもが多数居たということですが、危険と隣り合わせの現場で妻帯禁止だったはずです。統制も取れなくなっていたんでしょうね。死と(性)が隣合わせにあったとも言えるのかな。
ダキア戦争でブリタニアの兵士が派遣されることになり、脱走兵が増えたということが出土品から明らかになったとのことです。今更妻帯者だとも言えないし、恐らくその妻もブリタニアの女性だと思われますので余計に行きたく無かったんでしょうね。そして帝国は衰退期に入ります。
ローマ帝国が二分割され遂には滅びる運命にあるのですが、キリスト教に乗っ取られたいきさつは本タイトルでは語られていません。一神教の神を信じることは多様性の否定をも意味し、多様な民族を受け入れる寛容さも失われますます衰退を早めたと私は思っているのですが本筋からは外れますね。
このシリーズ、テレビで放送した時何で観て無かったんだろうと思ったのですが大量のコインの入った壺の発掘、しかも賄賂だったという紹介の下りで「あ、昔観た!」と気付きました。人間って興味のあるものでも忘れるものねと思いました。それも含めてシリーズ三巻借りて良かったとつくづく思いました。