東日本大震災と徒歩とFM福岡「ちんさや」と

(前回の続き)靴の履き替えを諦めたのはちょうど池袋だったと思います。デパートも何も軒並み閉まっていました。池袋でも電車を確認しましたがやはり動いていませんでした。仕方なく歩き続けました。

途中の量販店で自転車が売られていましたが車道も歩道も混み混みなので使えないと判断してスルーしました。後で聞いたら結構売れたみたいですね。練馬の駐屯地からは被災地出動の車が出ていき周辺から拍手が起こっていました。宿泊というのも考えましたがホテル、漫画喫茶、サウナも全て満員で入れませんでした。考えることは皆同じです。

新座まで歩き開いていた牛丼屋さんに入りました。牛丼を食べた後すぐに立ち上がることができず牛丼屋さんに30分以上もいたのは初めてだと思います。それからも歩き続けるとふじみ野の辺りまで来てようやく人の流れが切れました。東京から歩く決意ができる限界点がこのあたりなんでしょうね。車列も少し流れるようになってきました。

歩き始めて6時間でようやく家にたどり着きました。ギリギリその日のうちに帰りましたが靴の中は血だらけでした。翌日は布団から簡単には抜け出せませんでした。土日で良かったと思ったら電車が動かず週明け月火は自宅待機したことを覚えています。

歩き始めた時iPodで音楽を聴きました。最初は気が紛れたのですが音楽って聴きながら他のことを考えてしまうもので、不安とか心配も増幅されかえって落ち着かなくなりました。ヒーリングミュージックの類でも駄目でした。そんな時に聴いていたのがpodcastで落としておいたラジオでした。

その頃よく聞いていたのがFM福岡の「ちんさや」という番組でした。過去の放送も纏めてiPodに入れていたので家に帰るまでずっと聞いていました。今ではFM福岡の看板パーソナリティとなっているちんさんと、福岡のローカルタレントで今は東京でイラストレーターをなさっている林さやかさん(現横峰沙弥香さん)の軽妙な掛け合いを、ただ楽しく聞いて歩き続けました。なのでちんさんとさやかさんはあの時本当に私の心の支えでした。

あの時の靴は結構早く履きつぶれました。携帯電話ももうスマートフォンに変わりiPodも使わなくなってしまいました。でもiPodの本体そのものは捨てられず持っています。本当の被災地の方にすればどうでも良い話なのですが、自分が経験したことなのでここに書き留めておきます。あまり誰かの役には立たなそうですが。

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